求婚を育てるヒント

第3回のゲストは、芸人としてだけでなく、ミュージシャン、俳優、コラムニスト、ラジオパーソナリティーと、ボーダレスな活躍で注目を集めるマキタスポーツさん。今回、マキタさんのプロポーズに対する考え方をうかがおうとしたところ、ご自身の結婚、プロポーズについてつづられた一文をいただきました。そこには、結婚した人、今後結婚する人、全員必読の真摯な結婚哲学が…!ということで、マキタさんの熱い言葉を丸ごとご紹介しちゃいます!

今回のテーマ

僕は、人のプロポーズの言葉にはあまり関心がありません。というのも、僕独特の結婚観からだと思われ、ましてや、プロポーズは、単なる結婚の入り口であり、スタートダッシュに失敗した例も沢山見てますし、それに凝ってみたところで、結婚自体の価値が上がるとは限らないわけです。ま、女の人は「愛されてる実感」に敏感ですから、結婚生活の開幕に相応しい言葉や行動をもとに、自身が「大事にされてるか否か」ということの「程度」を量る節はあるとは思います。でも、やっぱり大事なのは「結婚後」です。

僕は、結婚後10年目で、初めてプロポーズをしました。

これは10年目にして、僕が妻に宛てた初めてのプロポーズの言葉(手紙)です。ちなみに、これは原文のままです。


のぞみへ

10年前、結婚式を挙げられなくてごめんなさい。

なんとなく始まってしまった結婚生活だけど、いろいろ大変な思いをさせたね。

まだ10年なのか、もう10年なのか分からないけど、日々、刻一刻とこなす毎日が、実は本当に大切でかけがえのないものだと思っています。

思えばこの10年の我々の歴史は、マキタスポーツの将来を信じたあなたの才能に報うための10年だったと思うのです。

あなたは心を病み、体を痛め、悲しみに耐えた。

あとは売れるしかないというけれど、本心を言えばあなたの信用を得るための月日だったのかもしれません。

我々芸人はともすれば一番身近にいる人を一番幸せにできない矛盾を抱えています。

そして、それを言い訳にしがちでもあります。

誰かの笑顔が欲しくて、あなたの笑顔がなくなるのなら、それは僕が目指した笑いではない。

だって、誰からもほめられる芸人で居たかったはずだったんだもん。

のぞみ、俺売れるよ。幸せにするよ。結婚してください。


やや独りよがりな点が気になりますが、その当時の気持ちが、フレッシュに、否、生々しく書かれていて、恥ずかしいです。

僕は結婚とは、「作品」と考えています。語弊があることを承知で書きますが、多くの趣味が成り行きなのと同じように、結婚も成り行きの「贅沢品」なんです。だって、今日、結婚も「自己表現」だから。

文明の発達し尽くした今は、あえて言えば、制度としての「結婚」は、人生において必ずしも必要ない嗜好品の類いなんです。

今は使い捨ての時代です。修理もすることなく、壊れたらすぐ買い換える、そういう時代。また、そんな時代に、本当の贅沢を手にするのは、実は経済的にも、時間にも、余裕がある人間だったりするわけで。金持ちの人が買うクラシックカーみたいなもんです。外車と同じくまめに“メンテナンス”しなくちゃ維持できない。

僕と妻が日々行ってるこの「行」は、言ってみれば、将棋の対局の山場を一枚の絵画として切り取った感じでしょうか。俯瞰した盤面は、案外美しかったりする。私は辛うじてそう考えたい。

だから、つらくても、妻とは戦っていかなくてはダメだと思うのです。それはいいネタを作ることと似てて、もっと言えば、「コンビネーション」という作品を創造するようなものなんです。何度も書き直し、練り直し、微に入り細に入り、隅々まで研究し切ったものが暫定的に正解となる、言わばマラソンの記録みたく、「更新」を前提としたレースでもあるのです。

いいネタを、良き作品を作り上げる才能が自分にあるのかはわからない。けど、僕は、妻とやり合いながらも、螺旋状にそれを上昇させていきたいと思っている。己の才能はそうやって磨くものだと思うし、また、僕のパートナーは「結婚とは作品である」ということを気づかせてくれた恩人だったのでした。

こんなこと、結婚前にわかるわけがないんです。プロポーズは10年目でも可能でした。



プロフィール

マキタスポーツ

芸人、ミュージシャン、俳優、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。2012年1月に放送されたTBS『金曜日のスマたちへ』の出演をきっかけにテレビ・ラジオの出演が倍増。更には2012年に公開された山下敦弘監督作品『苦役列車』の好演がきっかけで第55回ブルーリボン賞新人賞・第22回東スポ映画大賞新人賞をダブル受賞し、俳優という側面から世間を騒がせた。また、槙田雄司名義で初めて執筆した著書『一億総ツッコミ時代』は三刷りまで決定。多方面からの独特なアプローチで注目を集めている。

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